自分にしては実はオールモーツァルト、というプログラムを演奏したソロリサイタルは初めてであった。
今年の1月に2カ所でこのプログラムを演奏した。
モーツァルトの幼少時代から晩年の作品までのなかからいくつかを選んで、「モーツァルトー人生の旅路」と題して彼の音楽とその頃の出来事をお話したりしながらすすめた。
2014年に自筆の断片が発見された、有名なイ長調のソナタK.331(トルコ行進曲つき」)もプログラムに。
自分が子どもの頃から親しんでいる作品で、それもモーツァルトは死後200年以上経っているものがなぜ今更、音が違うことがあるのだろうか?
こんなセンセーショナルな出来事はそうそうない。
ブダペストの国立図書館で、無記名の自筆譜の山を丁寧に調べていたある音楽学者が、そのうちのひとつがモーツァルトのよく知られた音楽であることに気づく。
ソナタの中の一部の発見であったので、トルコ行進曲の楽章には音の変更はなかったが、1、2楽章においては数カ所、その新しい版に従った。

モーツァルトのK.331 メヌエット楽章 最新のヘンレー版より
こちらから自筆譜をダウンロードできる。(なんという時代!)この貴重な版をすぐにシェアできるようにしてくれて感謝。
http://mozart.oszk.hu/index_en.html
今回のプログラムは
Kv.397, 540, 355, 310, 25, 331
メッペル市の会場はアムステルダム周辺の自分のお客様が来てくれるにはちょっと遠いので集客を心配していたが、モーツァルトのお陰か、このソナタの話題のお陰か、なんと満席に。そして思いがけず嬉しい新聞批評(4つ☆)をいただいた。(訳さなきゃ!!!)

さらに、オーガナイザーのサポートのお陰でこんな映像を作成してくださった。話べたで使えるところが少なくて。。。さらに英語もひどくて、演奏会前で余裕もなくて、と言い訳ばかりだけれどでも綺麗に撮影してくださった、Salomon Meij 氏、 企画してくださったAdriaan Meij氏にはとても感謝している。
久しぶりに自分のシュタインのピアノを登場させることができた。
その前のお手入れが大変だったが、長い目でみて何度もレギュレーションしたり、新たなプロブレムや自分の楽器のことを詳しく知ることができるのはとても大事な機会。

と、一週間前にやぼなミスでこんなこともあったが。。。
ご近所のGijs Wilderom氏はじめ、何かあったら駆けつけられるフォルテピアノ技術者が多々いる贅沢なオランダ環境。
以前、自分で専用ののりをつけて、糸で巻いて治すやり方を習ったので過去に2、3度やったが、今回はGijs氏のアドバイスで糸はなしでもしっかり固まる方法を教えてもらった。
練習時間か、楽器の手入れかどっちに時間を使うか。。。練習時間がとても限られているのでほぼ、半々くらいな気もした。。
全ての音の弦への「接近」具合をチェックするだけで、2、3時間かかる。(FFからf3)
それも一度で終わらない。様々な要素がかみ合っているので、チェックポイントがたくさんある。
キーが動き始めるまでの「あそび」の部分の深さや、ハンマーがきちんとまっすぐ弦を打っているかどうか、鍵盤の高さは全てまっすぐに並んでいるかどうか、、、
それからこの部分

エスケープメントがスムーズに動くように、黒鉛がつけてあって、でも塗らなくてもいい、という意見もあるのだ。サンドペーパー派、木片で木部分をこする、などなど、自分でもいろいろ試してみる。
そして、調律もコンサート前には回数を増やす。
でもこうして楽器に手をかけると、相棒への愛着感も増す。
さらに舞台の上では音楽に集中したいから、出来る限り問題を少なくしておきたい。
そうして、一緒に共にした時間があって、一緒に会場に到着して、共に演奏会に出演するときの感慨は大きい。自分が所有できる、最初で最後の5オクターブのピアノだと思うから、いつまでも元気でいてほしい。
