リチャード・エガーのモーツァルトP協奏曲

8月5日。とっても久しぶりのコンセルトヘボウ大ホール。。。 なんともぼけていて、間違えて小ホールに入って席を探してしまった。 偶然小ホールでもフォルテピアノの演奏会で、舞台の上のフォルテピアノを見つけてすぐにはわからなかった。そちらはロナルド・ブラウティガムのベートーヴェンピアノソナタの夕べだった。 でも私が聞きにきたのは、リチャード・エガーのモーツァルトのピアノ協奏曲 KV 415 ハ長調。 オーケストラは NJO Orchestra of the 19th century! 18世紀オケではなく、19世紀オケ? これは10日間の若い音楽家のためのプロジェクトで、これまで一度も古楽器を演奏したことのない人たちが、プロジェクト中に招待された指揮者とともに勉強して、演奏会で披露、というものだった。指揮者はリチャード・エガー。 最初はハイドンの交響曲第101番「時計」。 2楽章の有名な時計のチクタクをファゴットと弦楽器がを刻むところ、アーテキュレーションがくっきり聞こえて、ピッチや発音があやふやだと、とっても聞こえやすい。。。絶妙な緊迫感と温かみが伝わる。 3楽章のメヌエットは3拍子の音楽で、3拍目が次の小節を誘い、どんどん、どんどんと音楽が気持ちよく流れてゆく。3拍目から1拍目への緊張感、ときには2拍目のアクセント、、とハイドンのリズム遊びをすごく楽しんだ。 そしてモーツァルトのピアノ協奏曲。 リチャード氏が最近購入したGijs Wilderom の楽器にも興味があった。 Gijs ーハイスさんはずいぶん前からとってもお世話になっているフォルテピアノ修復家、製作家である。ハイスの楽器は、ずいぶん練習やトライアウトもさせてもらっていたのでよく知っていた。 あの大ホールでどう響くのだろうか。 ・・・・・とっても自然に素直にリチャードの音色になっていた。 まだ製作されて何年も経っていないこともあるかもしれないが、私にはピュアなイメージがあった楽器だったので、ハ長調がぴったりだった。 ハ長調の性格*(18世紀頃には、各調性にはその響きの特徴から性格付けがされ、調性格論を唱える人たちがいた)と言われる「純真さ」と同時に「威厳のある感じ」が1楽章の Allegro poco maestoso (速く、少し堂々と)そのものだった。 リチャードの演奏はまるで、楽器を愛しくなでているようだったり、オーケストラと混ざり込んだ管楽器や弦楽器に溶け込む音色を出してみたり、いろいろなことを感興にまかせて試す。そして音楽への大きな愛がそのまま伝わってくる。大ホールの人たちの心を温かさで一杯に満たしてくれたと思う。 力強さはあっても決して、楽器を叩かない。大きい音楽の中にあっても、チャーミングな顔が見え隠れする。即興が次の楽章を導き、肩の力を抜いて自然に音楽できるところが、フォルテピアノの演奏として、モーツァルトの協奏曲の演奏として、いい感じだなあ、と思う。 プログラム最後のメンデルスゾーンの交響曲「イタリア」は速めのテンポでパワフルに流れていった。 古楽器にまだ完全に慣れていないオケのようだったが、指揮リチャード・エガーの音楽を堪能した。 やっぱり音楽はハートだなあ。。。

そろそろ産休終わり。。。

3ヶ月経って、赤ちゃんとの生活のリズムが整ってきた。 ミルクをあげる時間は、産褥看護士さんには3時間おきに、と言われていたが、なかなかきっかりにはいかないので、欲しがるときにあげて1時間半から4時間おきのときもあった。寝る時間も不規則だった。日本では「自律授乳」という母乳の仕方の言葉があって、欲しがるときに一日に何回でもあげる、というやり方があるそうだ。 オランダでは3時間おき、というのは基本として保健所の本に書いてある。 先日オランダ人の義理の姉の家で、同じ頃に生まれた赤ちゃんに、きっかり3時間のスケジュールを実行しているのをみて、ショックを受けた。 そのうちに託児所に行ったりすると、「お宅の子供のスケジュールは?」と聞かれるよ、といわれあせった。 「うちの子は、スケジュールなんて言葉でいえない。。。」 託児所は赤ちゃん一人一人のスケジュールにあわせてくれるのか。。。 それから、「3時間おき」に挑戦してみた。 今までで一番問題だったのは、上手に寝かせられなかったこと。 泣くのを放っておけなくって、泣くとすぐに抱っこしてあやしてしまう。そしてひたすら子守唄を歌い続けてみる。 だが2ヶ月半ぐらいから、2分、3分と泣かせっぱなしにしてみた。 すると、たいてい、最高でも7分ぐらいで眠る。 「なーんだ。。。」 目が覚めたときに「さっき泣いたのに来てくれなかったじゃないか」という表情はなく、すっきり目覚めるし、抱っこしてもなかなか眠らない、、、という神経質な状態から、深く健康的に眠っているように見える。 そうすると、3時間ぐらいたつと、自然に目が覚めたり、寝すぎるときにはこちらが起こすこともできる。実際無理に起こすことはほとんどする必要がなく、リズムがつけやすくなった。 夜中に起きることも最近減ってきた。 母乳だと、消化がよく夜中に起きる回数も多くなりやすいとも聞く。 そのために、夜寝る前には粉ミルクに変えてみたりしたが、結局母乳でも自然に長く寝るようになった。 保健所の定期検診に行ったときに、3時間スケジュールについて質問したら、「あなたの好きな方法ですればいいのよ!」と。 母乳だろうが、粉ミルクだろうが、夜中に何回も起きようが、何歳まで母乳をあげようが、「あなたがハッピーなら私もハッピー」となんでもアリ、の答えをもらって少しまた驚いた。 オランダでは仕事を続ける女性が多く、一般的には出産後3ヶ月まで産休である。その後、託児所やベビーシッターを週に2−4回利用しはじめる。 夫も週に4回働くという人も多く、または両親が近くに住んでいて週に一回くらい協力してくれる場合もある。基本的には両親に頼る人は少なく、夫婦で協力して子育てをしていく。 3ヶ月しか母乳をあげない、と仕事の開始と同時にわざと母乳をストップしていく人もいるようだ。 でも母乳を続ける人は、冷凍保存して託児所に持っていったりもしてがんばる。 うちも託児所を近いうちにスタートすることになっている。 朝8時または9時から夕方6時まで。 今までずっと一緒にいる生活から、数時間でも預けるのは心苦しい気持ちもあるが、預けている友人、知人にきくと、皆満足している。 赤ちゃんに慣れているプロの手にかかっているのだから、大丈夫、と。 そして子供たちはとっても楽しんだ顔して帰ってくるよ、と。 うちの子はどう反応するだろうか。

Astor piano?

知人がこんな写真を送ってくれた。 アメリカ、ヴァージニアにある第5代目大統領ジェームス・モンロー(1758-1831, 任期1817-25)の家にあったピアノだそうだ。 一見、典型的なイギリスの1800年頃のテーブルピアノ。 でもメーカーのAstor (London)というのは聞いたことがない。ブロードウッド(当時の有名なイギリスのメーカー)といわれてもおかしくないそっくりさである。 当時、小さなメーカーは大きなメーカーと同じ部品を使用してピアノを製作することもあったと聞く。または、有名なメーカーの楽器を修復して、その後には自分の名前をプレートに入れてしまったか。 とにかく、Astor氏はどのような楽器を作った、または修復したのか、演奏可能であれば、音を出してみたいという思いにかられる。 ちょっと調べてみると、面白い手紙をインターネットでみつけた。 Read “the letters about the Astor piano (source: New York Times) 一つ目の手紙は、ブロードウッド社が、’Astor & Broadwood’ というパートナーシップはない、という事実をロンドンタイムズ誌に知らせている。二つ目の手紙では、Astor氏はブロードウッド社にピアノを注文しており、7月か8月にはニューヨークへ船便で送りたいとのことである。1795年の手紙。もしかしてこのピアノがモンロー大統領のピアノになったのかしら? この手紙を書いた Astor、ジョン・ジェイコブ・アスター(1763-1848)、、、実はアメリカ最初の億万長者で、貿易から富を築いた人であった。 ということで、アスターピアノは、製作者ではなく、購入したアスター氏が自分の名前を入れて売っていたのであった。。。 それにしてもジェームス・モンロー大統領はイギリスのピアノを所有していたなんて、弾くためか、贅沢品として買ったのか、どちらにしても、素敵な趣味をもっていたのだ。

サギ

アムステルダムらしい、レンガ作りの家の日本でいう4階に住んでいるのだが、通りの大きな木のちょうどてっぺんあたりが窓からよく見える。  今の季節、緑の葉っぱが色濃く茂っている。  たくさんの鳥がこの木にとまりにくるのと、すぐそばの空を眺めることが多くなり、鳥の目の高さを楽しんでいる。  でもこの訪問者にはちょっと驚いた。  サギ(reiger)である。  この鳥はアムステルダムの街の中で、地上でよく見かける。 住宅用ボートの上にいたり、ひょこひょこっと公園を歩いていたり。  でも朝起きて、窓の外に大きなサギが木の枝に立っているのをみて、ぎょっとした。もちろん鳥だから飛んでこられるはずだね。。  

預かりもの

階下に住む、中国人とオランダ人のカップルがドアをノックしてきた。 一ヶ月のホリデーに出かけるので、あるものを預かってほしいと。  それは、「かめ」に入った「亀」であった。  亀には名前がないそうだが、カリフォルニアの亀だそう。体の裏側がオレンジ色で鮮やかである。確かにその亀のことをファイアーフォックス、と言ったのだが、その種類は探しても見つからない。  ちなみに彼女は妊娠4ヶ月なのに、ユーゴスラビア、チェコ、ポーランドへのキャンプ一ヶ月のホリデーに出かけた。  大事にしてね。。。  

かぼちゃの花

あー! ある日ベランダをみてびっくり。 約2ヶ月前にいただいたかぼちゃの苗に、立派な花が咲き始めた。  そういえばかぼちゃの花は黄色であった。 この数日続いた、真夏日のおかげで太陽の光をたっぷり浴びて、葉っぱが大きくしっかり育った。  数センチの双葉の苗だったのに。  実がなる日が楽しみだ。

出産事情今昔

60、70代の知人の女性たちが、自分たちの頃の出産の体験談を聞かせてくれる。 「私は2日間かかった」「3日間かかった」「ワゴン車の中でさっと産まれてしまった」 「自宅でさっと産まれてしまい、夫が靴ひもを解いてへその緒をしばった」などなど。 さらに、当時は時間がかかったときには、「驚異のオイル」というのを薬局で買って来て飲んだ、という話も。(70代オランダ人) そのオイルの原料はなんなのだろうか〜? 最近はきいたこともない。 それから oudse bruin beer という種類のビールを飲むと母乳によいよ、というのは3人から聞いた。 ビール飲みたいから、試してみたいが、アルコール禁止じゃなくてよいのだろうか。。。!

育てること

久しぶりにピアノの鍵盤に触れる。  聞き覚えのある音楽が、耳の中に響く。  ただ、指がやや鈍い。でも、、でも、、、ピアノを弾くとあついものが込み上げて来て、音楽がパワーを与えてくれる。  久しぶりに外の空気を吸うと、アムステルダムの街は変わりなく、シャボン玉の中ででも暮らしていたかのような気分になる。  子育てとはなんと時間がかかるものだろうか!!!  ピアノ曲を勉強するときに、時間をかけて育てていくのに似ている。  曲の持っている力、内容を理解すること、弾き込み、自分の考えや感覚を投影させてから再創造すること。  時間をかければかけるほど、作品がよくなるように、子供と一緒に過ごすことで、理解が深まるだろうか。  じーっと見ていると様々な表情をする。  赤ちゃん言語は、難しい。。。

フリーランサー

自分はオランダでは、「フリーランス」の音楽家という立場で、’ワンマンビジネス’(従業員がいない仕事)という登録になっている。日本では「自由業」にあたる。 アートに関する仕事の人ばかりでなく、オランダでこの肩書きの人に時々出会う。特に昨年お世話になったのは、大工さん。そして今回、助産師さんにお世話になった。  大工さんについてはまたいつかの機会に書くことにして、今回の出産でお世話になったのはフリーランスの助産師さんだった。 私が通っていた助産院には4人の助産師さんがおり、出産の際にはそのうちの一人が担当してくれることになっていた。  だが。。。。実際に「その時」が来たとき、助産院の緊急用の携帯電話にお返事をしてくれたのは、その日たまたま入っていたフリーランサーのピンチヒッター。 こういうことも、あり得ます、とは聞いていた。 だから初めて会う方が、緊急の破水に来た。誰が来ようと、助けてもらえるなら、、、という気分だったのでかまわなかった。  ただ、覚えているのは、一応土足禁止にしている家に、ずんずんとブーツで入って来て、ロングヘアーが動くたびにをぱさっと翻り、香水が漂っていたこと。 「ごめんね、香水あなたにはきついかもしれないけれど」とも。  てきぱきと仕事をして、風のように去っていった。病院に行くことになったとき、私達はタクシーで、彼女は自分の車で病院まで来てくれて、引き継ぎをして、また去っていった。  出産後一週間の間に、助産院から3回の往診があるのだが、偶然にも彼女が一度来てくれたので、お礼の挨拶ができた。 「昨晩も出産に立ち会っていてね。今朝もほとんど寝ていないの。」ととっても忙しそう。  ジーンズにブーツ、ロングヘアー。道ばたで出会ったら、普通のきれいなお姉さんで、彼女が今出産に立ち会っていてね、、、なんて誰もわからないだろうと思う。 フリーランサーは「ワンマンビジネス」の自分の会社だから、仕事着も、もちろん自由。でもこの仕事で香水って。。。妊婦は匂いに敏感なのである。  実際仕事をしている姿はかっこよく、楽しそうだった。  「自分のスタイル」的な働き方は、とてもオランダらしい。  記憶が鮮明な一日の中でも、とくに印象深い存在だった。

産褥看護士さんのヘルプ

オランダでは出産後の約8日間、産褥看護士の自宅ヘルプが受けられる。(うちの場合は計49時間だった)これは、もしも出産後何かの事情で病院に3日間滞在したら、自宅でのヘルプは5日に減る。帝王切開などで入院が長引くと、自宅ヘルプはなくなるだろう。  毎日母子の健康チェックをしてもらい、授乳の指導や、赤ちゃんの体調の見方、お風呂の入れ方などを学んだ。うちに来てくれたソーニャはすばらしかった。先に述べた仕事の他、さらに三度の食事を作ってくれて、買い物、掃除、洗濯干し、アイロン掛けも素早くこなす。いつも以上に部屋がつねに片付いていて、タンスの中の赤ちゃんの洋服も一目でわかる。 ソーニャの作ってくれる、オランダ式朝ご飯はとってもおいしかった。オランダのboterham (オープンサンドウィッチ)ひとつでも、のせるチーズやハムの切り方ひとつで味わいが違う。  噂に聞くオランダ人の好きな「イチゴサンドウィッチ」。マーガリンを塗った白パンにイチゴのスライスとグラニュー糖。この組み合わせ、意外とおいしいのです。  ソーニャが毎朝来てくれて、私は自分の静養と赤ちゃんのことを学ぶのに集中できた。